子供の頃、二軒隣の家に90を超えた婆さんが住んでいた。出生届が適当な時代だったとかで、本当の自分の年齢が分からないと言っていた。この婆さんはとても元気な婆さんで、その年齢を感じさせないほど快活に喋り、辺りをうろついていた。確か「おつぎさん」と呼んでいた気がする。おつぎさんは異常に体力があって、よく山に山菜を採りに出かけていた。おつぎさんは頻繁にうちにも来ていた。うちの婆ちゃんが生きていた頃は居間の掘り炬燵で婆ちゃんと話していたし、婆ちゃんが死んでからは同じ場所でうちの母ちゃんと話をしていた。自分のことを「オレ」と呼んでいた。子供の頃周りにいた婆さんは、みんな自分のことをオレと呼んでいた気がする…