私の家は、1961年に建てられた、篠原一男という建築家の芸術作品「から傘の家」です。篠原一男はもともと数学者だそうで、「緊張」と「内向性」をテーマに、寸分の狂いも許さぬ数字を用いてうちを設計したと言います。 赤の他人の芸術作品に住む。これがなかなか大変で、ある意味、災難と言ってもいいかも知れません。 うちの場合、家族がこのデザインを望んだわけではなくて、昭和30年代という時代背景からしても、新進気鋭の建築家の威厳に従ったという感じでした。 暮らしの利便性なんか一切省いて、芸術として強烈なコンセプトを打ち出した家の造りに、無理やり自分たちの生々しい暮らしをはめ込んだわけですから、極め